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紅葉>読んだww弥生のキャラがかわいくてしょうがない≪
第一章 十六夜麒麟の巻
「早く、間に合わなくなるじゃないっ!」
馨美のきゃんきゃんと吠える子犬のような声が聞こえてきて、巖弘は黙って額を手で押さえた。その横で凪辰はほけほけと笑い、妃瑚も苦笑する。
彼らは、白虎、青龍、鳳凰の友好大使である。
幼い姿の馨美や皇族一年嵩の蒼嵐と違い、彼らは揃って20代前後の外見で、眼鼻立ちもすっと華やかな雰囲気を持っている。
がしかし、性格に若干問題があった。
白虎領巖弘は無口で無表情だが、ひとたび切れると歯止めの効かない性情である。鳳凰領妃瑚は穏やかに見えてとことんしたたかで、誰よりも強靭な意志を持っている。
そして最も厄介なのが、青龍領凪辰。
普段ほんわかと一点の曇りもない笑みをたたえている彼だが、その実とてつもなく腹黒い。
この彼の性格のおかげで、宵闇宮青龍皇族遥玲、瑶希両者がどれほど苦労したことか。がしかし、本人は無自覚なので、咎めるわけにもいかないのだ。
「巖弘」
男にしては高く澄んだ声音に呼ばれ、巖弘は無言でかえりみた。青い髪に銀の瞳をもつ青年―と言っても巖弘と同い年ぐらい―が穏やかに微笑んでいた。
「久しぶりだな、絃之」
「ああ。長らく白虎にも顔を出していなかったからな。藤早郷の皆は、息災か?」
「ああ」
そんな二人の会話を見るともなしに眺めていた馨美は、背後に忍び寄った蔭に気付かなかった。
少女の後ろに回り込んだ男は、ゆるく固めた拳で小さく彼女の頭をたたく。
「てっ!・・・あ、凪辰」
「お久しぶり、の挨拶もなしですか?『姫君』」
話し方も表情も穏やかなのに、背後に雷鳴を感じるのはなぜだろう。
「ひ・・・」
「できの悪い方ですね。こんな『姫君』で、かの松築陽朱雀は大丈夫なのでしょうか?そうは思いませんか、『姫君』」
わざとらしく『姫君』に力を込めて、連続する凪辰。雷鳴に混じり、竜巻が繰り広げられる。
この『姫君』というのは、そもそも絃之がつけたあだ名だった。彼女の奔放さにくたびれ果てた絃之が、「わがまま姫君」と呼びだしたのが始まりである。
おされぎみの馨美を見かねた妃瑚が、助け船を出した。
「凪辰、そのようにからかい通すものでは・・・」
「まぁまぁいいじゃないの妃瑚。この憎っったらしいガキに鉄槌を喰らわせてあげなくちゃね」
遮って割って入ったのは、麒麟の絢子。馨美の所業に辟易しているのがよくわかる。
「全員そろったな、そろそろ輿を出すぞ」
蒼嵐の野太い声で、皇族は素直に祭りに向かった。
***
ごとり、と黒水晶の器が机に置かれた。
「――そうか、祝賀祭か」
低く低く呟く男の顔は、逆光になって判然としない。
「久しぶりに、騒乱が起きる。楽しみにしていろよ、蒔嵯峨帝国皇族よ」
「また何か企んでいるのか?」
突如として語りかけた高い声音に、しかし男は当然のように答える。
「無論だ。あんな獣をのさばらせておくわけにはいかない」
それを眺めていた影が、うっすらと笑みを張り付けたように見えた。
「――――――――俺達が鉄槌をくわえてやるまで」
「その通り」
あの地はもともと我らのものだ。
だから取り返してやるまで。
***
祝賀祭とは、春の祭りのことである。十六夜麒麟の民達が崇める太陽神の使い使役精が麒麟の地に降臨され、人々に栄華をもたらすと言われている。
民はこの日のために用意した絹をまとい、祓え詞を唱え、夜通し踊り続ける。普段農作物を育てている貧しい農民も、この日ばかりは仕事を忘れて楽しむのだ。
「――――――琳華様よ!」
商人の一人娘と思われる少女が、ふいに叫ぶ。その瞬間、民の歓声はひときわ大きいものになった。
「琳華様!」
「巫女様がおいでになった!」
「ああ、ほかの皇族の皆様もおいでだ、ありがたいねぇ」
民は涙し、皇族を祀るかのように舞い続けた。
***
男は鉄壁の塔の上にいた。
彼は白銀の弓をつがえている。まっすぐに見据えているのは、麒麟の巫女がいまします輿。
薄くて形の良い唇が、いっそ愉しげにつりあがる。
「まずは、お前からだ。清眼の女」
きりきりと弦を引き絞る。
「生き地獄に、さらしてやるよ」
弓から放たれた銀の矢は、そのまま迷いなく真っ直ぐに琳華のもとへ飛来して行った。
続
あとがき
敵サイドをちょこっと出すことができて満足w
彼らと皇族の先祖様の間に、色々と因縁があるようなので、その辺もお楽しみに。
おまけ
琳華(りんか)*十六夜麒麟(いざよいきりん)の巫女。18歳。
清眼(神々や神獣、精霊を見ることができる瞳。魔を見ることができるのは邪眼)を唯一もつ皇族。
黒い髪を複雑に結い上げているが、解くとその長さは30センチ弱引きずるほど。
絃之(いとゆき)*十六夜麒麟の友好大使。26くらい。
そもそも傍系の血筋で、護衛官になるはずが故あって友好大使に。
蒼い髪を常に一つで括っている。前髪は長め。
絢子(あやこ)*十六夜麒麟の大臣(おおおみ)。23くらい。
華やかな雰囲気で人を引き付ける性情を持つが、感情的で馨美とは仲が悪い。
金髪に碧の瞳をもつが、当人は美的感覚がすこぶる鈍い。
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